こだいらぽんたの「基礎学力」勉強日記

基礎学力(高卒程度)を身につけたい。読書も旅もしたい。フットボールも見たい。

「人生は選ぶより、選ばされていることの方が多いかもしれない」 読書ノート モーパッサン著 『女の一生』(永田千奈訳)243日目~244日目

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モーパッサン著『女の一生』(永田千奈訳 光文社古典新訳文庫)

結婚はこわい。いい相手なら幸福だが、とんでもない相手なら自分の一生を台無しにしてしまいかねない。『女の一生』の主人公ジャンヌは、とんでもない相手と結婚したために不幸を背負ってしまった。裕福な家庭で育った男爵家令嬢。容姿端麗。性格も明るい。お金持ちで美人で性格も良くて・・・と何から何までそろっている彼女だが、夫にだけは恵まれなかった。

結婚してからわかることもある。夫ジュリアンは、最強のモラハラ夫だ。まず、びっくりするほどのケチだ。おカネを貯める目的なんかない。ただおカネがたまっていくのを見るのが嬉しくて仕方がないタイプなのだ。結婚前は自分の財産はほとんどなかったにも関わらず、結婚したとたん「君の財産は僕の財産だよね。夫婦なんだから」と言い出し、妻の実家から受け継いだ財産のすべてを我が物顔に管理する。新婚旅行に行けば、馬車の運賃や商品の値段を値切り倒す。チップは相場よりはるかに低い額を渡す。農場の小作人からは搾り取る。馬車をひいていた馬もエサ代がもったいないので売り払ってしまう。

冬は薪をケチるので、家の中は寒くて仕方がない。ジャンヌがお取り寄せしていた「おいしいパン」もおカネがかかるからダメ。おまけにジュリアンは、自分の身だしなみにも気をつかわなくなってしまう。おカネのかかることはすべてムダなのだ。

それに加え、ジュリアンはセックスが大好きだ。相手は誰でも構わないらしい。女中のロザリを妊娠させておきながら知らん顔を決め込み、「父親が誰だかわからぬ子どもを抱えた未婚の母なんか家に置いておけない」と、女中を必死に追い出そうとする。フルヴィル伯爵夫人ともヤリまくる。ケチで誰とでも見境なくセックスをしたがり、他人の気持ちがこれっぽっちもわからない。あんまりな人物設定だが、モーパッサンはこのどうしようもない男を描くのが、実は楽しくて仕方がなかったのではなかろうか。「こんな人間、いるか?」と思わせるほどの描き方で、かえって笑えてくる。

一方、主人公のジャンヌはユーモアの感覚を持っている。ジャンヌの父親が、未婚の母となったロザリを気遣って、彼女に持参金2万フランと農場をもたせ、どこかの男に嫁がせてやろうという計画を話したとき、当然のことながらドケチな夫ジュリアンは烈火のごとく怒り出す。「2万フランも出すなんて馬鹿げてる!もったいない!」と。自分のカネではなく、舅のカネなのに。妻のものは自分のもの。妻の実家のものももちろん自分のもの。

それを聞いていたジャンヌは、父親の前で大笑いするのだ。「あの人、何回『2万フラン』って言ったかしら?」と。夫の節操のなさとケチ臭さは、もう笑い飛ばすしかないのだ。

ジャンヌは「もう、自分は夫を愛していないのだ」ということを早々に受け入れるのだ。だからフルヴィル伯爵夫人とジュリアンが浮気をしていることを知っても、「ふーん」という反応しか示さない。 このあたりは一番面白かった。

実際に結婚生活をしてみて、考えていたものとは大違いなこともある。そのときは、夫を愛せない自分をあっさり受け入れてしまうというのも生き抜くための手なのかもしれない。それは寂しいけれど、離婚しないのなら達観するしかない。人間はそう簡単に変わらないのだから。

このままジャンヌが強く生き抜いて、夫をいら立たせてくれたら面白いのに。せめて息子をどこに出しても恥ずかしくない立派な男に育てるとか。自分も金持ちの恋人を捕まえて、ジュリアンを家からたたき出すとか。なにか留飲の下がる展開を期待したのだが・・・。

結局、ジュリアンは浮気相手の夫にあっさりと葬り去られてしまう。やっとドケチ夫から解放され、ジャンヌが幸せになったかといえば、そんなことはない。

ジャンヌは一人息子のポールを死ぬほど甘やかして、ダメな人間にしてしまうのだ。息子に友人ができただけで嫉妬してしまうのだから、完全に病んでいる。成人したポールは遊びで金を使いまくり、ジャンヌは請求書の支払いに追われることとなる。そして「私の人生は不幸だ」とまたしても嘆く羽目になるのだ。夫が信じられない分、ジャンヌは息子との愛情こそ確実なものにしたいと願ったのだろうが、そんなのは息子の知ったことではない。

ジャンヌは流されるままに人生を生きた。しかし、人生はこんなものかもしれない。人間は主体的に何かを選び取るより、「選ばされている」ことの方が多くはないだろうか。そこでどう振舞うかはその人次第である。

 

桑原武夫が選んだ教養ある日本人のための必読書「世界近代小説50選」 

これで5作品読み終えたことになる。

 

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