こだいらぽんたの「基礎学力」勉強日記

基礎学力(高卒程度)を身につけたい。読書も旅もしたい。フットボールも見たい。

「第一次世界大戦はどうしても避けられなかったのか?」 ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(9)一九一四年夏Ⅱ』(218日目~222日目)

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ロジェ・マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人々(9)一九一四年夏Ⅱ』(山内義雄訳 白水Uブックス

 

第一次世界大戦は避けられなかったのだろうか。避けられたとすれば、どのような手立てがあったのだろうか。当時のフランス人たちは「戦争なんて起きるわけないじゃないか」と意外と楽観的だった。しかも、大部分の国民たちは戦争を望んでいなかった。それなのに、いつの間にか巻き込まれてしまうという恐ろしさが、この本を読むとよくわかる。歴史が繰り返さないことを祈るのみだ。

 

9.一九一四年夏Ⅱ

チボー家の人々』第9巻のあらすじを紹介する。

 

ピストル自殺をはかったジェローム。彼はオーストリアのある会社に名義貸しをしたのだが、その会社が破産してしまい、債権者たちから訴えられてしまう。結局、遺書を残して自殺する羽目になった。意識不明のジェロームが運び込まれた病院で、ジャックとジェンニーは思いがけず再会することになる。何も説明せずにフランスから忽然と消えてしまったジャック。ジャックがいなくなったことで、体調を崩してしまったジェンニー。ふたりの間に気まずい空気が流れ、お互いよそよそしくふるまう。

結局、ジェロームは数日後に死んだ。女好きのジェロームにあらゆる苦難をなめさせられたフォンタナン夫人は、つかの間の安らぎを感じる。そして、夫が残した破産問題の後始末をつけに、オーストリアへ行こうと決意するのだった。

 

一方、フランス左翼新聞の『ユマニテ』社では、ジャックをはじめとする社会主義者の仲間たちが、ヨーロッパの情勢について議論を交わしていた。サラエボ事件は世界戦争に発展してしまうのか?戦争を引き起こさないためにはどうしたらいいのか?

オーストリアセルビア最後通牒を突き付けていた。つまり、「この条件を受け入れないなら、戦争をするよ」という通告だ。期限は48時間という極めて短いものであり、提示された条件も厳しいものだった。ロシアは期限延長するよう、オーストリアに求める。しかし、オーストリアはロシアの仲介をはねのけてしまう。オーストリアは戦争を望んでいるのだ。

戦争をやめさせるには、民衆が立ち上がるしかない。国家、民族を越えて、世界中の労働者や社会主義者が団結し、大規模な反戦デモやゼネストを起こせば、お偉方が戦争をやりたくてもやれないだろう。プロレタリアートよ、団結せよ。ジャックは「インターナショナル」の力を特に強く信じていた。革命による社会変革もいいが、今は戦争を回避することが一番大切だ。

 

ダニエルが任地に戻る日がやってきた。ジャックはダニエルを駅まで見送りにいく。インターナショナルの活動が頓挫すれば、ダニエルの命も危険にさらされるだろう。「戦争にはならない」と、ジャックはダニエルに力強く宣言する。

ところが、「ジェンニーが来てるんだ」というダニエルの思いがけないことばに、ジャックは真っ赤になってしまう。振りむくとそこにジェンニーの姿があった。ジェンニーも兄の前でジャックを無視するわけにはいかず、目を合わせずに頭を下げる。ジャックは「じゃあ、失敬」と、逃げるようにその場を立ち去る。

ところが、駅を出た瞬間、不思議な力が彼を立ち止まらせる。運命が与えてくれるものを拒んでいいのだろうか。素晴らしい機会を永久に取り逃がしてしまっていいのだろうか。ジャックは踵を返し、駅に戻るのである。

ダニエルを乗せた列車は行ってしまった。兄と別れたジェンニーがこちらに向かってやってくる。ジェンニーはジャックの姿が目に入ると、恐怖の表情を浮かべ、そのまま顔を合わせないように出口の方に向かう。ジャックは「話したいことがあるんだ!」とジェンニーを追う。「いや!」「話があるんだ!」「行ってちょうだい!」と、ここからふたりの追いかけっこが始まる。追いかけて、追いかけて、追いかけて、ジャックはついに叫ぶ。

「ジェンニー、ゆるして!」

ジェンニーはそこで立ち止まる。互いに必要だと感じているのに、逃げたりはぐらかしていたりしていたふたりは、この場面から真に打ち解け合うのだった。

 

セルビアはついに、オーストリア最後通牒を受け入れた。国家主義団体《ノロードニャ・オブラーニャ》を解散させることや、反オーストリア活動をした疑いのある将校を軍隊から追放すること、などなど。しかし、誰を被疑者とするか審議する法廷の構成(オーストリアを入れるか入れないか)だけは保留事項にしてほしい。と、セルビアはほとんど屈服に近い態度に出た。ところが、この「保留事項」がオーストリアは気に食わない。結局、交渉は決裂した。オーストリアは初めから「戦争ありき」だったのだ。

セルビアオーストリアに譲歩したことは有名なことがらなのだろうか。ここまで譲歩したというのに・・・ここで戦争を食い止める手立てはなかったのだろうか。

 

アントワーヌの治療を受けている外交官のリュメルは、人々の前では楽観論をぶちまけるが、アントワーヌには苦しそうに本音を漏らす。「世論を準備させておかなければ」と。情報を細工すれば、世論は思うように振り向けられる。

セルビアオーストリアが開戦すれば、セルビア擁護のためにロシアは動員令を発動する。ドイツはオーストリアとの条約に従って動員令を発動する。露仏同盟により、フランスも動員令を発動することになる。もう実際に各国は戦争準備を着々と進めているというのだ。動員の必要などないと確信の持てる国などどこにもないと。

(第10巻につづく)

 

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