こだいらぽんたの「基礎学力」勉強日記

基礎学力(高卒程度)を身につけたい。読書も旅もしたい。フットボールも見たい。

見ておいて損はない名作映画100選の5作目。映画:子猫をお願い

「見ておいて損はない名作映画100選」の5作目は韓国映画だ。

女性ならわかってくれる人が多いと思う。高校時代に仲の良かった友達と「卒業しても絶対一ヶ月に一度は会おうね!」「一生、友達でいようね!」と、約束した経験はないだろうか。ところが何度か会っているうちに、お互いの人間関係や経済状態が変わったことに気づき、話が合わないことに愕然としたことはないだろうか。

この映画では、高校時代に仲の良かった女子5人組が卒業後それぞれの道を歩いていく。誰一人うまくいっている人間はいない。どこにも居場所が見つからず、淋しくなって連絡を取り合い集まる。しかし、なんとなくギクシャクした雰囲気になってしまう。特に経済状態の違いによるすれ違いは残酷だ。飼い主が見つからずたらい回しにされる子猫のごとく、彼女たちも居場所を求めてさまよう。「あの日あの時の5人」の幻に救いを求める。なんともほろ苦い青春群像劇だ。

 

5作目。

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子猫をお願い

(2001/韓国)

監督:チョン・ジェウン

出演:ペ・ドゥナ/イ・ヨウォン/オク・ジヨン

 

 正直に告白するが、初めて見たとき、この映画の良さがよくわからなかった。なぜなら「えっ、これどういうこと?」と驚くシーンが多かったからだ。「日本と韓国は似ている」という先入観が邪魔をして、日本との大きな違いがあるとそこに意識が向いてしまい、映画全体を楽しめないのだ。

しかし、再度見て考えを改めた。理由は上記のとおりだ。詳しいレビューは『こだいらぽんたの読書日記』に後ほど書くことにして、ここでは「えっ、どういうこと?」と驚いたシーンを列挙していきたい。

 

まずオープニングから「えっ」となる。商業高校の制服を着た5人の少女たちが「戦友の死体を踏み越えて/前へ前へと突き進め/洛東江よさらば/我らは前進する」と足を踏み鳴らしながら、楽しそうに軍歌を歌っているのだ。洛東江というのは朝鮮戦争の激戦地だったそうだが、それはともかく「日本と韓国は似ている」と思い込んでいると、いきなりびっくりさせられることになる。日本の女子高生は軍歌なんか歌わない。21世紀になっても、韓国に住む彼女たちにとって戦争は身近な存在なのだ。

 

この映画が上映されたのは2001年。この年がどういう年だったか、Wikipedia「韓国の歴史年表」で調べてみた。すると、「ストライキ中の大宇自動車富平工場に機動隊4,200人突入し、労組員らを排除」とか「ストライキ中の暁星蔚山工場に警官3,600人突入」とか、けっこう大きな労働争議事件が並んでいる。この頃は日本も「失われた10年」といわれ不景気のさなかだったが、韓国はもっと不景気だったのか?

この映画で、仲良し5人組のうち大企業に就職できたのはたったひとりだけだ(ヒジュ)。それも親のコネで入れてもらった会社であり、やっていることは雑用係にすぎない。若い時はちやほやしてもらえるが、それも賞味期限があることを彼女自身知っていることが切ない。他の4人は、給料未払いのままリストラされて仕方なく食堂で働いたり、父親が経営するサウナで働いたり、露天商を営んでいたりしている。「どうしてこの子たちは定職につかないのか?」と初めは不思議だったが、おそらく定職につかないのではなくて、つけないのだ。高望みをしているから就職できないのではなく、マジで就職できないのだ。そして就職できるかどうかも、生まれた家庭環境によって左右されているのだとしたら、かなり深刻な問題だ。5人のうち、「どこか遠くへ行きたい」としきりに言っている子(テヒ)がいるが、それだけ当時の韓国は20歳くらいの女の子にとって息苦しいところだったのだろうか。この辺の事情は、韓国に詳しい人にぜひ聞いてみたい。

 

5人の中でも、ひときわ貧しさを強いられている子がジヨンだ。彼女は仁川のスラム街で今にも倒壊しそうな家に祖父母と暮らしている。「今にも倒壊しそうなんです」とジヨンが大家に掛け合っても相手にしてもらえない。(日本ではあり得ない。ついでにバスでも電車の車内でもガンガン携帯電話で話しているが、これも日本では見ない光景だ。)実際、ジヨンの家は倒壊してしまい、一緒に住んでいた祖父母は下敷きになって死んでしまう。ショックで口がきけなくなってしまったジヨン。ところが「未成年だし、身よりはいないし、なにより捜査に非協力的で反抗的だから」という理由で、彼女は「分類審査院」という少年鑑別所のような施設にいきなり送られてしまう。(日本ではますますあり得ない。)この辺もついていけず「えっ」となったところだが、韓国は社会的な身分差別がはなはだしいところなのかもしれない。「汚らしいスラム街に住んでいる貧しい少女だし。身よりはないし。いいや、鑑別所に入れちゃえ」とか、日本ではおおよそ考えられないことが起こるのだろうか?この辺の事情も、詳しい人がいればぜひ聞いてみたいところだ。

 

とはいえ、この映画は社会問題を扱った映画ではない。あくまで5人の少女たちの物語だ。一度ではわからない。再度見直して、彼女たちの置かれている状況をていねいに読み解けば、この映画の良さがわかる。映画の初めの方で、ヒジュが暗い顔をして通勤にいくところが何ともいえない。離婚調停中の両親が大喧嘩を繰り広げ、窓ガラスを割り、クルマのフロントガラスはめちゃくちゃに壊れている。仁川から逃げ出したくなるはずである。こういった細部に目が向くようになると、これほどハマる切ない映画はない。

この映画は間違いなく名画だと思う。

 

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