こだいらぽんたの「基礎学力」勉強日記

基礎学力(高卒程度)を身につけたい。読書も旅もしたい。フットボールも見たい。

読書ノート チャールズ・ディケンズ著『デイヴィッド・コパフィールド』全4巻(中野好夫訳/新潮文庫)

◎2020年1月6日(月)晴れ。

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チャールズ・ディケンズ著『デイヴィッド・コパフィールド』(中野好夫訳/新潮文庫)全4巻を読了した。

この本は主人公のデイヴィッド・コパフィールドが様々な艱難辛苦を乗り越え一人前に成長し、作家として自立を果たし、最後はハッピーエンドで終わる物語だが、デイヴィッドが精神的成長を遂げるにしたがって読んでいる方も自分が成長したかのように思えるような気持ちになれるところが印象的だった。

たとえばドーラとの結婚生活だ。彼女は素直で可愛らしくて天真爛漫だが家事能力がまるでない。料理もできなければ家計簿もつけられず、女中の監督もできないので家のものを盗まれたり自分たちの名義で借金をされたりと散々な目にあっている。デイヴィッドはドーラを愛しているものの、彼女が自分の良き相談相手となるような存在でないことに空虚さを感じている。

ここまでくれば「デイヴィッドは離婚して人生をリセットすることで、本当に必要な相手と再婚する展開になるんだろうな」と思う。ところがそうはならないのだ。

デイヴィッドは育ての親である伯母に「伯母さんからドーラに注意してやってもらえないか」と相談する。ところが伯母は、二人の間に他人が介入してはいけないと真剣に断るのである。自分たちの将来はふたりで切り開いていくものであり、他人がどうにかできるものではない。この言葉にデイヴィッドは感銘を受ける。

デイヴィッドはなんとか自分の方にドーラを引き寄せようと、自分の興味のある話題ばかり話したり、シェイクスピアを読んで聞かせたりして彼女を「教育」しようとするのだが、この試みは失敗に終わる。人間は簡単に変われるものではない。ふたりの結婚生活に暗雲がたちこめる。そこで、デイヴィッドはあっさりと方針転換するのである。

このうえは逆に、私がドーラの方に調子を合せ、いいことはできるだけ分け合って幸福に、そしてまた、やむをえない責任はすべて、私が背負って、やはり幸福にと、そんなふうにでもしていくよりほかになかった。それが、いろいろと考えるようになってから、私が心して努めることにした躾けだったのだ。そんなわけで、結婚生活第二年目は、第一年目よりも、はるかに幸福だったし、さらにいいことは、ドーラの生活が、すっかり明るくなったことだった。(第4巻 P80-81)

幸福になるためにはさっぱりとあきらめた方がいいものもある。「性格、目的が違う相手と一緒になってしまった」という感情と、「ドーラを心から愛している」という感情。この相反するふたつの気持ちがデイヴィッドの心の中で不思議な調和を保ちはじめるのだ。ドーラのことが単に好きで好きでたまらなかった恋愛時代から、しっかりと地に足をつけた結婚生活を考えるようになるデイヴィッドの成長ぶりは目を見張るものがある。

 

デイヴィッドの周囲をとりまく登場人物たちも、味のある人物ばかりだ。一番印象的だったのは、伯母の遠縁であり盟友でもあるミスタ・ディックが初めて自分の労働で金を稼いだ場面だ。彼は精神病院に入れられていたこともある頭のおかしな男だが、心根はとても優しい。伯母が破産したとき、ディックは今まで自分の面倒をみてくれた伯母の窮状に誰よりも心を痛める。そこでデイヴィッドは親友のトラドルズと相談して、ディックに筆写の仕事を与えるのだ。これはディックにとって、初めて金を稼いだ経験となった。

要するに、こちらも、仕事の量が過重にならないようには、十分注意したし、また彼も、週の初めからやり出したわけではないが、それでもとにかく、土曜日の晩までに、十シリング九ペンス稼いだ。さっそく彼は、近所の店という店に行き、この貴重な儲けを六ペンス銀貨にかえてもらうと、それらを盆の上にハート型にならべ、目には誇らしげに嬉し涙まで浮べ(ママ)ながら、伯母の前に持って来た   その光景、おそらく私は、生命のあるかぎり、忘れないであろう。いうなれば、初めてこの役に立つ仕事をやり出してからというものは、まるで何かすばらしい魔法にでもかかったみたいで、事実あの土曜の晩など、この世にもし幸福な人間がいたとすれば、まさしくそれは彼であった   私の伯母を、世にも偉大な女性と仰ぎ、同時に私までを、世にもすばらしい青年と信じて、感謝にあふれていたミスタ・ディックだった。(第3巻 P185-186)

こうしたエピソードの数々に心揺さぶられる。

そして、さまざまな登場人物との出会いやできごとがデイヴィッド・コパフィールドを一人前の男に成長させていくのである。

 

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